ギャーギャー言い合いながらも、自転車は走る走る。
急ブレーキがかかって、あたしの顔面が佐野の背中にぶつかったときには、もうすでに佐野の家に着いていた。
「あー疲れた。お前肉落とせよ。重すぎて俺の足がもげるとこだったわ」
ムカッ。
あたし今鼻水タラタラだったらよかった。
ほら、クレヨンしんちゃんで人気のボーちゃんみたいに。
あたしがあんなのだったら、こいつの背中にべっちょり鼻水おみまいしてやったのに。
「おら、早く入れよ」
玄関開けてるサトウのご飯。
あ、間違った、佐野だ。
「デーブイデー(DVD)見たらデブになるんでしょ。肉落とせって言われたからあたし帰る」
「そのネタはもう忘れろ!」
佐野は恥ずかしそうにそう叫ぶと、あたしの腕を引いて強制的に家の中に連れ込んだ。


