ホントにこいつ、最後まで待ってたよ……。
「楢崎は?」
「邪魔だからって、気ぃきかせて先に帰った」
「あー、なるほど」
楢崎の中で、あたし達は付き合ってるってことになってるもんね。
カップルの間に入れるワケないか。
……まぁ、偽物だけど。
佐野はダルそうな顔で佇んでいる。
その手にはしっかりあたしのカバンもあった。
「あ、カバンありがと」
あたしは佐野が持ってるカバンに向かって手を差し出した。
だけどなぜか、カバンは返ってくることなく、逆に佐野があたしの手首を掴む。
……え、なに?
顔をあげると、佐野は真剣味のある目であたしを見つめていた。


