「だから、ほんの少しでも喋れたらって思ったんだけど、ごめんな?俺が走ったばっかりに」


「いいのいいの」


「優しいよな、雛姫は。まあ、そーゆーとことか好きだぜ!俺は」


ニコッと笑う平助くんの顔は、みるみる赤くなっていく。


さすがに、夏に近づいているとはいえ、冷えたかな?


まだ梅雨に入ってないし。


「ありがと。でも、顔赤いよ?中入ろっか」


あたしが言うと、平助くんは無言で頷いて、あたしの斜め後ろを歩く。


「雛姫は気にしてないのか・・・・・・なら、よかった・・・・・・」


「なにか言った?平助くん?」


「い、いや独り言!それより、早く戻ろ!」


「うん!」


平助くんは笑って走り出した。