やれやれ、俺の気配を察知したらしい。
俺のいる方へと、まっすぐに向かってくるリョウの足音と息遣い。
フローリングを一歩ずつ踏み締めるたびに、体中に力が入ってくるのが俺にも伝わってくる。
暖の残っていた部屋の空気が、みるみる冷えていく。息苦しさとともに、体を押し潰すような重苦しさを帯びて。
さあ、来いよ。
一発で仕留めてやるから。
再び、胸元に手を滑り込ませる。
指先に触れたのは、ほんのりとした温もりを帯びた塊。輪郭を確かめるようになぞりながら手のひらへと収めて、グリップを握り締めた。
ざわりと胸の奥が震える。
心地良さに反応した人差し指が、行き場を求めて疼き始める。早く早くと急かすように。
リョウが足を止めた。
俺たちを隔てる一枚のドア。
お前は、どんな顔をしてる?
リョウの手が、ドアノブへと伸びてくる。
3、2、1……
ドアが開くと同時に、飛び出した。

