私は放課後、人もまばらになった校舎をオートマチックの掃除機のように、ちょこまかと歩いていた。

ことは二日前。

部室に一年生の女子が訪ねてきた。
面識はなかった。

その日部室には私しかいなかった。

「どうぞ」
私は椅子を勧めた。

「ご用件は?」

「カバンがなくなったんです。携帯とかノートとか教科書が入ってて、困ってるんです」
彼女はか細い声でいった。
体は小さい、好きなものはイチゴです、てへ、とかどうどうといっちゃいそうなタイプ(どんなタイプだよ)で、ヘンテコなシュールマンガを愛読してそうだ。ほら、だいたいクラスに一人はいる、普段は静かなんだけど、実はすっごい世界持ってますみたいな子。

「カバンを最後に見たのはいつですか?」
「今朝の朝会の時です。朝会から帰ってくるともうなくなってて」

「なるほど。カバンの特徴は?」
「茶色いナップサックです。メーカーは×××です」

「分かりました。見つかり次第連絡します。携帯はないんですよね?自宅に連絡しますよ」