増田が気分よく踊っていた時、



バシンと音をたててドアが開かれた。

その瞬間、クラスは静まり返った。


バックヤードユニオンの一斗が若松敬と二村潤を従えて教室に入ってきた。

ピタリと会話の花は黙り、夜の朝顔のように口を閉じた。

三人はゆっくり、ゆっくりと歩いた。
靴の音が、
コツ、コツ、コツと響いた。


三人は増田に近づいた。
「降りろ」
一斗がいった。
増田は机から降りた。

「ずいぶん楽しそうだな。え?」
一斗はオールバックの黒い髪の下の鋭い目でにらんだ。

「何も悪いことはしてませんよ」
増田がいった。

「不謹慎だ」
「まあ、確かにそうかも知れませんが、皆喜んでくれるんです。あ、どうです?一緒に踊ります?」

一斗は増田のえりくびをつかんだ。
「ふざけるなよ。毎週のように事件が続いてるんだ」

増田は意外と度胸がある。
じっと、一斗を見つめた。

「あんたらはやりすぎだ」
「そうさせた奴がいるからだ」
「かもしれんが、俺たちには関係のないことだ」
「おい、こいつを連れてけ」
下っ端の敬と潤はニヤニヤしながら、増田の腕をつかんだ。
「放せ!」
「やなこった。たっぷり可愛がってやるよコメディアン君」
敬がいった。