「別に、許したわけじゃないからね? これはお礼だから」


「わかってます、ありがとうございます!」


「もう、声が大きい。子供が起きちゃうでしょ」


「あっ、すいません!」


「もう・・・ 本当にありがとね。じゃまた会社でね、剛彦」


「剛彦・・・?」


「もう、早く帰りな!」


芳美は頬を赤くしながら、剛彦の体を玄関の外へと押し出した。


「あっ、はい! おやすみなさい!」


芳美は帰って行く剛彦の背中を、見えなくなるまでずっと見送っていた。


「剛彦・・・ 芳美さんが俺の名前を呼んでくれた・・・ やったぁぁぁー!」


剛彦は沈む夕日の下、飛び跳ねながら帰って行った。