あれから病み癖や私の性格はひどくなる一方だった。
リストカットはエスカレート、彼と復縁することを叶えることだけを夢見ておまじないや電話での占い、復縁する方法が書かれているお高い本まで手に入れたりしたもんだ。
傷を癒すためにホームページを作っていた。ブログなどもやっていた。
彼との十一ヶ月間を小説にしてみたりもした。勝手な妄想の世界が生み出した小説も書いた。
しかし、ページは炎上。
愚痴を書かれる毎日。一番ひどかったのは、”君が死んでも誰も悲しまないから大丈夫だよ”だった。
…しかもそれは同一人物による犯行だった。
ひどくまとわりつき、ページを何度変えてもやってくる、ストーカーのような女だった。
(その頃の私は誰による犯行かわからなかった)
”重い女”。いつしかそう呼ばれるようになっていた。
何度だって追いかけた。
初めて、生まれて初めて、こんなに人を愛したことは無かっただろう。
彼からしたら、私の愛は歪んだものだったかもしれないけど、それでも彼を愛していた自分が居た。
彼のことを考えるだけで胸が苦しくなって、自然と涙がでてきた。
今思えば彼のどこがそんなに良くてそんなことをしていたのかすらわからない。
ただ、時間がたてば忘れる…そんなことが私にはできなかった。時間なんて頼りに出来なかった。
一日でも早く彼とヨリを戻したかった。
それは、彼が別れた後に発した言葉が原因だったのかもしれない。
「○○にするんじゃなくって、やっぱり涙と付き合っておくべきだったな…」
じゃあ今すぐヨリ戻せよ!そんな女私が殺したるから今すぐに戻ってきなよ…
それを言われた瞬間、そういいたかった。けど”殺す”なんていったらまた嫌われるんだろうな…そう思って私はそのとき、何もいえなくなった。
それからというもの、彼からの連絡は途絶えた。
だからこそ、いやだった。忘れてしまうのが、手放してしまうのが。
いつか結婚しようって約束したじゃん。指輪だってくれたじゃん。一生一緒に居ようって言ってたじゃん。…全部全部嘘だったの?
それを考えるだけできつかった。毎日泣きまくった。
…翔との別れから、半年の月日が流れた。七月。
私に新しく彼氏が出来た。
最初は唯からの紹介だった。
平日、彼女は携帯の中に入っている一枚のプリクラを私に見せてきた。
「この人、かっこよくない!?」
そこに写っていたのは一人の男性。茶髪のちょっといかつい感じの男性。
瞬時に私はなんとなく、私、この人と付き合うんじゃ…と直感した。
まさかそれが当たるなんて、思ってなかった。
その三日後の休日、突然彼女から
『今暇?なんかね、おじさんが涙と遊びたいって言ってるんだよねw』
そうメールが来た。
休日だったため、どこにも出かける気がしなかった。
しつこく誘われ、断れなくなり仕方なくベッドから降りて支度をした。
けど、あまりにも行きたくなさ過ぎて二時間も待ち合わせ時間に遅れていった。
唯は少し怒っていたが、私はお構いナシだった。
おじさんが私と遊びたい?何それ面白いのと心の中でイライラしながら、そのおじさんがいるゲームセンターへと向かった。
最近になって彼女の本性を知った。
それはグループの子を一人仲間はずれにしてからだ。
確かにその子は結構うるさいし、グチグチものをいう子だけど友達思いのいい子だった。
唯のやることは卑怯だった。自分の手は汚さず、他の大勢の友達に彼女の愚痴を散々いって、よってたかってネットで叩く。それは他校の友達も入っていただろう。
彼女のブログは炎上していた。顔がキモいからとか死ねとかいろいろ書いてあった。
しかも学校を止むを得ない理由で辞めていった子の愚痴まで。その子とは一番仲かよかったはずなのに…
さらには全然知らない男とヤりまくっているセフレでもあった。
毎回男とヤったことを報告されて気持ち悪くなっていた。
今までに出会ってきた中で、最低の人間だった。
後悔した。なんでこんな子と友達になったんだろう…って。
だから今回だって唯のお遊びには付き合ってられなかった。
その”おじさん”とやらと遊ぶのだって。
「雄二くん!ようやくきたよ~この子が涙だよ~」
さすが唯だよ、瞬時に声色変えて男に寄ってったよ…本当に怖い女だよ。
絶対敵に回したくないランキングNo.1の女だよ、私の中で。
「あ、君が涙ちゃん?なんかプリクラで見たときと全然違うね~」
「そう?」
「目つきとか…髪型とか!」
「そりゃそうだよ~プリじゃかわいく決めるもんだよ!」
「そうだよな〜。でもかわいいね~」
い…!!!!!いつの間にわしのプリなんざ見せたんじゃこの女…!!!!!
個人情報晒してんじゃねぇよ!!!!!
…と心の中で大声で叫んでやった。
もちのろん、声には出さないように。
「涙ちゃん、だよね。初めまして。俺は神崎雄二。よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
「そんな硬くならなくっていいよータメ語でいいから!」
「あ、はい」
相手がプリと全然違うって言ってたけど、奴だって全然違かった。
身長とか想像していた以上にはるかにチビだし、た、たたたたた短足だし…
でもこれで二十一歳って…どーゆーこっちゃ。すごく子供っぽいっていうか…
てか、オッサンって…まぁ、私達からしたらオッサンだけど…
(人のこと言えないけど)
「とりあえず、どっかいこっか」
「あ、はい」
少しドキドキしていたのは秘密。
