次の日、私は教室に入ると、黙って席に座った。

いつもなら先にきて座っている優貴に声をかけるところだが、今はちょっと顔を合わせずらい。

そんな私にもお構いなしに、優貴は私にこう言った。


「よう」


ほんと、いつもと変わらない挨拶。

私は昨日あんたのせいであんなに泣いたのに。

まぁ、優貴には分かるわけもないか…

こんな状況だからこそ、この普通の挨拶が私には嬉しかったのかもしれない。


「おはよ…」


「おいおいそんな顔してちゃ可愛い顔が台無しだぜ?」


か、可愛い!?

頬が一瞬で熱くなる。

だって優貴に可愛いなんて言われた事無…


「嘘だよばーか」


私の思考をさえぎってそう言うと、優貴はけらけらと笑い出した。

ひ…ひどい。

純粋に喜んだ私を返せ。


「な、も~なんなの~~!?」


「っはは、その調子その調子」


爆笑する優貴を見て、私までおかしくなって笑い出す。



「お前の落ち込んでる顔なんて、見たくねぇよ」



優貴はまた私の心を突き刺す言葉を笑いながら言う。

こうやって私をからかったのも、私を元気付けようとしてくれた優貴なりの不器用な優しさなのかな?

そう思うと胸が締め付けられるような気持ちになった。

この優しさを素直に幸せだと受け止められない自分が悔しい。

周りからみたらきっと平凡で幸せな日常のワンシーン。

なのに

私は…


「ほらまた暗い顔する~。マキ俺のこと嫌い?」

嫌いなわけない。



大好き。



そんなこと、言えるはずもないけれど。