屋上まで駆け上がり外に出ると、
肩で息をして地面に座り込んだ。


そばに立つ暁斉は息すら上がっていない。


「あんた、なんでそんなに普通なのよ」


「なにがだ」


「走ったのに、疲れていないの?」


「俺は戦をしているのだぞ。このようなことで
 疲れているようじゃ、とっくにこの首、
 落ちているだろうな」


鼻で笑う暁斉が本気で憎く思う。
こんなことで息が上がるあたしはやっぱり現代人だ。


昔の人って、すごいんだなぁ、と素直に思った。


「気が付いたら図書室にいたの?」


「ああ。戦をしていたはずなのに、
 この訳の分からんせいふくというものを着てあの場にいた。
 

 そこで不思議なものを見つけた。
 数日前に俺のもとに届いた文が、
 あのとしょしつという場にあった。
 不思議でならん」


「ふ、文?それって……」


「これだ」


暁斉はポケットに手を突っ込んで探すと、
中から白い紙を取り出した。


やっぱり、あたしの手紙だ。
間違いないと思う。
それを証明するように暁斉が紙を開く。
するとやはりあたしの字で、
【あなたは誰?いま、どこにいるの?】と書かれていた。


「これ……あたしが書いたの」


「本当か?しかし、どうしてお前からの文が届いたのだ」


「さ、先に手紙を書いたのは暁斉よ。
 私がもしも武士でなかったならって、
 そう書いた手紙があの図書室にあったのよ。
 それであたしは返事を書いて……」


ふむ、と考え込むように押し黙る暁斉。
しばらくそれを眺めていると、
暁斉の整った綺麗な瞳があたしを射抜いた。