あたしがぼーっとしていると、
仁が心配そうにあたしを見た。


「大丈夫か?なんか疲れてる?
 今日は早く帰ったほうが・・・」


「いいの、大丈夫。
 あたしちょっと図書室に用があるから・・・」


「・・・ほんと大丈夫かよ。俺、日誌書いてっから、
 終わったらそっち行くよ」


「え?」


「一緒帰ろうぜ」


「う、うん。わかった・・・」


「よし。じゃあ、また後でな」


「うん・・・・」


仁の笑顔に胸が痛む。


あたしは耐えられなくて、何故か泣きそうで。



踵を返すと急いで教室を飛び出した。







夕暮れの誰もいない図書室は不気味で。


夢中で走ったときは気付かなかったけど、
このひっそりとした空間があたしは嫌い。


ゆっくりと本棚へ近付き、
歴史関連のスペースの前で止まった。



「戦国・・・・」



さっきも今も、そっと呟いたのは戦国時代。


自然とのびたその手は、一冊の本を手にしていた。


他と比べるとものすごく古くて、
ところどころ破けそうだった。


その場でぱらっとページをめくると、
また、あの声が聞こえた。