はっと息を飲む音が近くでして、それが則暁くんのものだと知る。
則暁くんは立ち上がって襖を開け放った。
外にいたのは、あの雪姫様だった。
「姫。何度も申し上げました。
ここに来てはなりません。戦も始まりました。お帰りください」
「あの人を戦に出さないでください!
あのお方には死んでほしくありません!」
雪姫様は必死の形相で則暁くんに詰め寄る。
則暁くんの背中しか見えなかったけれど、
則暁くんは「お帰りください」と言うだけだった。
則暁くん、彼女のことが好きなのよね。
それなのに、自分の思い人が別な人を……
仕えるべき人、実の弟を好きだなんて、
耐えられないと思って不憫になる。
何度こうして追い返したんだろう。
またあの冷たい目をしていないといいけれど……。
「貴女は、由紀さん?」
雪姫があたしに気付いて視線を寄こした。
驚いて固まると、雪姫はあたしの方に体を向けた。
「貴女、あのお方とお近づきになれるご関係なのかしら。
だったら伝えてください。戦には出るなと。
この私自らが出向いてきたと。
戦など止めて私と共に生きましょうと」
玉のような瞳が潤む。
この人、本当に暁斉のことが好きなんだ。
あたしも、仁がもしこの時代の人で、
戦に出るって言ったらこうして同じように止めるのかな。
まだよく分からないけれど、戦に出るってことは
今生の別れになるかもしれないんだよね。
そんな場所に、大切な人に行ってほしくないのは誰だって一緒。
ならば。
「分かったわ。あたしが伝えてきてあげる」
「な、なりませんっ!」
則暁くんが慌てて声を上げた。
雪姫が訝しげにあたしを見る。
「本気にしたのですか?もう戦に出てしまったあの方に
そのようなことを告げられるはずがないと、
いくら女の私でも分かっていますよ」
「だから、あたしが今からそこに行って伝えてきてあげるって言ってるの」
「由紀殿!」


