お父さんが口をぱくぱくさせて絶句する。
手に持っていた新聞紙を床に落とし、
目を見開いて暁斉を見る。
お兄ちゃんを見ると、お兄ちゃんは
もう驚きはしていないものの、暁斉を睨みつけていた。
やっぱりそうだよね。
自分の娘、妹の部屋に見知らぬ男がいるなんて、
そりゃびっくりもするし、警戒もする。
あたしが2人の立場でもそうする。
むしろあたしはこの場で張っ倒してるかも・・・。
あたしは深呼吸して口を開いた。
「2人とも聞いて。この人はあたしの友達、暁。
あたしのことを迎えにきたから、
さっき部屋に入れたの」
苦しい言い分だけど、上手く言い逃れるしかない。
あたしはそう思って淡々と告げた。
なるべく嘘だってばれないように、平然と。
お父さんはごくっと息をのむと、
しばらくして安心したように笑った。
「そうか、そうか!!いや、驚いたよ。
暁くん、娘を迎えにきてくれてありがとう!!
由紀の父だ。よろしく」
お父さん、なんて単純なの。
普通こんな無茶苦茶なこと信じるかな?
残念すぎるよ。お父さん・・・。
だけどお兄ちゃんは違った。
睨み付けていた目を緩めなかった。
「・・・由紀、本当のことを言え。
そんな格好の友達、由紀にいるはずないだろ」
しまった。
こいつ、着物なんだった・・・。
お父さんの目は誤魔化せても、
お兄ちゃんはそうはいかなかったみたいだった。