「・・・ん、」



「由紀。起きろ」





仁が呼んでる?


あれ?確かあたし、タイムスリップして・・・。


それなのになんで仁がいるの?


「おい、由紀」


・・・仁?


「ん・・・。仁・・・?」


ぼーっとした頭を働かせて、ゆっくりと目を開けると、
あたしは固まった。


ん?


何・・・これ。


「由紀!起きろ」


仁の声だけど、仁じゃない。


目の前にいたのは別な人。


「え・・・?」


「何だ?またそんな阿呆みたいな顔して」


そう言って少し眉をひそめるその人は、
見覚えのある男。








「き、きゃあぁあっ!!」





ぼやっとしていた思考がはっきりして、
今置かれている状況を理解したあたし。


咄嗟に悲鳴をあげて両手をつき出した。





「由紀!?大丈夫か!?どうした!?」


お兄ちゃんの慌てた様子の声が聞こえたかと思うと、
間違いなくあたしの部屋であろう扉が開いた。





「な・・・由紀・・・?」




「い・・・ってぇ!!何するんだよ!!」



お兄ちゃんの詰まった声と、
吐き捨てるように発せられた声が重なる。


そんな・・・嘘でしょ?



びっくりしたのはお兄ちゃんだけじゃない。


あたしも同じ。



だってそこには




着物を着たあいつの姿があったから。