「え・・・」


「遅い」




低く綺麗な声が、短く放たれた。


この声・・・。


もしかして、暁斉?


「案の定。
 やっぱりお前は聞いてなかったんだな」


「え?」


「腰紐の結びはこうだ。よく見ておけ」


暁斉はそう言うと、手際よく可憐に結んでいった。


あたしの知っている結び方とは少し違うやり方・・・。


結び終わるとあたしをまっすぐ立たせ、
ピンクの着物を掴んだ。


「次はこの桃。まぁ、順くらいはわかるだろう。
 これは屋敷の中で過ごすときの格好だ。
 寒ければこっちの赤、そうでないならこの桃。
 自分で調節するんだ」


説明しながら、今度は赤の羽織を着せる。


時折触れる冷たい手の感触が妙に心地良くて、
あたしはぼーっとしたまま体を預けていた。







「これで完成だ。外に出る時にはこの赤を脱いではならない。
 覚えておけ」


耳元でそっと囁くような低い声が、あたしを擽る。


優しくかかる彼の息が温かい。


「それよりお前、村で俺の名を呼んだな?」


「は?」


するりとあたしから離れると、
暁斉は怒ったようにそう言った。