視線が痛い。


あたしは顔をあげてみんなを見返した。


「・・・何?」


あたしの問いかけに誰かが答えることもなく、
教室は静まり返ったまま。






「アイスドールの春日さん・・・」






誰かの微かな呟きとともに、
あたしはため息をついて廊下に出た。








「由紀!」


ゆっくり廊下を歩いていると、後ろから声がした。


あたしを“由紀”と呼ぶのはこの学校に一人しかいない。


この声をあたしはよく知ってる。


あたしの彼氏、結城仁。


「仁。何か用事?」


「や、用事っつぅか、
 ちょっと顔見たかったからクラス遊びに行こうと思ってさ」


「そう・・・」


「・・・・・・俺が来た時くらいは笑えよなぁ!!」


「ごめん・・・」


あたしが謝ると、
仁は大きく笑ってあたしの頭を軽く小突いた。


「いいって!お前、笑うとかわいいじゃん。
 少しは気抜いて笑えよ」


「・・・・うん」



ごめんね、仁。


仁はいつも心配してくれるよね。


みんなに、あたしが笑わなくて表情のない
冷血人間だからって


“アイスドール”


なんて呼ばれているのを、仁はしっているから、
いつもあたしのいないところで怒ってくれてる。


だけどあたしの前では明るく気遣ってくれてるの、
知ってるよ。


それなのに、そんな仁にも素直になれなくてごめん。


「んじゃ、またなー」


「うん。ばいばい・・・」


仁は優しい。


だけど、その優しさがあたしには苦しい。


それに応えられないあたしに、イライラするの・・・。