あたし、何してんだろう・・・。
こんな状況下で。
あいつが何も聞かないのはおかしいけど、
あたしだっておかしいじゃん。
それこそタイムスリップなんてしたら
もっと慌てるだろうに・・・。
さすがは、アイスドール。
順応性の早いこと。
大きなため息をつくと、あたしは仕方なく制服を脱いだ。
則暁くんが用意してくれたのはまず、白い着物。
その上に重ねるようにピンク、赤と揃っていた。
白い着物に手をかけてそっと羽織ったとき、
大事なことに気付いた。
「全然見てなかった・・・」
動揺していたからか、暁斉と言い合ってたからか、
全く頭に入ってなかったんだ。
どうする?
着方、聞こうかな。
ううん。だめ。
あいつ、暁斉にバカにされるもん。
適当でいいよね?
でも、雑にやって変だったら
それこそ馬鹿にされるよ。
そんなふうにぐるぐると考えていると、
襖がすっと、きれいに開いた。
「きゃあ!!」
誰か来た?
恥ずかしくて後ろを振り返れない。
そのまま叫んでしゃがみ込んだあたしは、
誰かの体温を背中に感じた。
後ろからのびるその綺麗な手は、
羽織っていた着物の腰紐にかかっていた。