「則暁。随分短い挨拶だったようだな」


「申し訳ございません。止められず・・・」


「ちょっと、則暁くん。謝らないでよ。
 あたしが悪いんだから」


「いえ。私の役目ですから。
 このお方、名は春日由紀殿。異国の姫かと・・・」


「・・・ゆき?」




長屋に着いて、あたしと暁斉、そして則暁くんの3人で
向かい合っていた。


やっぱり変だよ。


“由紀”って何がおかしいの?


眉を顰めた暁斉の顔を見て、
あたしはむすっとした。




そんな顔したいのはこっちよ。


こんな変なとこ来ちゃって。


ていうか、ありえないことが起こっちゃって・・。




あたしがぼーっとしていると、
腰に誰かの手が触れた。



「な・・・っ!?ちょっと、何急に!!」


手をかけていたのは則暁くんで、
突然のことにびっくりして叫んだ。


則暁くんはあたしが叫ぶと俯いて頬を赤らませた。


ねぇ、則暁くん。


それでもこの手が離れないのはなんで?


あたしがぎゃーぎゃー騒いでいると、
暁斉があたしの口を手で塞いだ。


「煩い。変な気をおこすな。じっとしてろ。
 お前には恥じらいというものがないのか」


や。


恥じらいがあるから叫んだんですけど・・・。


むすっとして口を閉じると、
則暁くんが声をあげた。