暁斉の言葉に若者はたじろぎ、
やがて慌てたその瞳にはどこか嫌な光がともった。


「結城暁斉・・!!いつもいつも偉そうに・・・っ
 俺のが大人だ。年上だ。年上様を敬え!!」




「あぶない!!」



思わず叫んだ自分にびっくりする。


だって、若者の振り上げた刀がきらりと光ったから。



斬られるの?


テレビの中だけのものだと思ってた・・・。


目を逸らそうにも逸らせないこの状況に、
あたしの足は震え、地面にぺたっと座り込んだ。




「暁斉様!!」



芳さんが叫んだ瞬間、鋭い金属音が響いた。


チリチリと擦れあうような音がする。


思わず閉じた目をゆっくりと開けると、
そこには若者と対峙する彼の姿があった。


とても、同い年とは思えないほど強く、
鋭い眼差しで・・・。


「くそ・・っ!!」


「俺に従うのが嫌ならここから出ろ。
 他所でお前が俺と同じ職に就けばいい」


暁斉が刀を腰鞘に収め、着物の乱れを整える。


若者に背を向けると、荒れ果てた辺りを見回して
淡々と声をあげた。


「仕事に戻ってください。壊れたものについては
 こちらで処分しよう。芳、皆を手伝え」


「はっ」


てきぱきと指示を出す暁斉に、
あたしは唖然としていた。


この人・・・何者なの?


「おい。俺は則暁と残れと言ったはずだ。
 どうしてここにいる?」


そばにいた暁斉の目があたしを捉えた。


それは先ほどの冷たいものではなく、
少し幼い、けれどもしゃんとした温かい目。


あたしは動かない足のせいで立つことができずにいた。


「あれ・・・。立て、ない」


「はぁ?立てない?」


暁斉はここに来て初めて気が抜けた自然の表情をした。