「あ!、由紀殿!!どちらへ!?
 動いてはなりません!!」


則暁くんの声を背に、あたしは気付くと
走っていた。


見慣れない門をくぐり外へでると、
ふいに右方向へと走る。


どっちかなんて知らない。


それでも勝手に足が動いた。


だんだんとあの不思議な声が大きくなると、
ふもとに村のような集落を見つけた。










「おい、何事だ。何故騒ぎを起こしている。
 黙らぬか!!暁斉様がいらしておる。静まれ!!」




あ・・・、あの2人・・・。


人の集まっている中心に、すらっと立つ男の姿。


あれは芳さんと・・・暁斉・・・。


暁斉って、偉いの?


芳さんはなんでこんなやつに仕えてるんだろう。




色んなことが頭の中をぐるぐる回ってる。


そんな時、乱闘を起こした張本人であろう人が
前に一歩出た。


「はぁ。実は私、この者の肩にぶつかりまして・・。
 謝ろうにも気付いたらこの有様でして・・・」


そういい始めた老人は自分の顔にできている痣を
指さした。


「おい、じいさん。そんな言い掛かりは
 よしてもらおうか?俺ァ・・・」


年老いた老人の言い分に噛み付いてきた若い男が
荒々しくそう言うと、途中で口を噤んだ。


あいつが・・。暁斉が男の前に出たからだった。


近付いてみてみると、背筋が一瞬のうちに凍りつく。


あたしを起こしたあいつはどこか18歳の子供らしさが
残っていたのに、


今のあいつには微塵も感じられない。


強く鋭い視線を若者に向けていた。


「どうした?お前の言い分も聞いてやろう。
 続けろ」


この声・・・。


やっぱりあの・・・。