「え?」


「暁斉様とはどのようなご縁が?」


「そ、そんなのないわよ!!
 あたしは気付いたらここに・・・」


さっきから変。


何かがおかしい。


同じ日本人なはずなのに、
会話が成立している気がしない。


目の前にいる則暁くんも芳さんも、
暁斉って男もみんな着物だし。


“様”とか“姫”とか“家臣”とか。


一体何を言って・・・。


「では、貴女様の名は何と申されますか?」


「名・・・。由紀。春日由紀」


「え・・・。ゆき姫?」


「は?」


「いや、雪姫は津田家の姫君。春日など聞いた事が・・・」


あたしの名前に何か問題でも?


明らかに動揺してぶつぶつ呟く則暁くんを見て、
あたしはじとっと目を細めた。


「何か問題でも?」



「失礼。私、名を則暁(のりあき)。結城家時期当主、
 暁斉(あきなり)様の家臣でございます。
 以後、お見知りおきを」


片膝を立ててそう名乗る則暁くん。


それを見てあたしは悟った。




ここ、現代じゃない・・・。



どこか別の・・・昔の場所。



でも、こんなことってある?



あたしは自分の部屋で寝てたはずなのに・・・。



「則暁くん。あの・・・今って何年何月何日?
 最近起こった出来事とかってあるかな?」





「今は元亀4年葉月の6日でございます。
 少し前、足利義昭殿が追放され、現在この国を
 支えているのは信長様にございます」