ふらふらと立ち上がって辺りを見回す。


和風の室内と、何もない景色。


いつもの景色じゃない。


本当になにもないの。


突然立ち上がったあたしを心配して、
芳が口を開いた。


「どうした?ここは結城家の長屋だぞ」


結城・・・。


ゆうき・・・・。


仁!!


「仁の・・・家?」


ううん、違う。


仁の家は前に来たけど、もっと明るい。


確かに和風で珍しいなって思ったときもあったけど、
こんなんじゃなかったはず。


どうなってるの?


「じん・・・とは?」


男が不思議そうに訊ねた。


あたしはその男を見つめて言った。


「彼氏」


「かれし・・・?何だそれは」


「へ?」


何だそれはって・・・。


彼氏は彼氏じゃん!!


訳がわからなくなって呆然としていると、
遠くから声が聞こえた。



「暁斉様!表により村人の乱闘にございます!!」


「ああ。わかった。すぐに行こう。
 芳はついて来い。則暁はその娘と共に残れ」


「「はっ!!」」


芳と先ほど声をあげた男の子、
則暁くんが返事をすると


暁斉と呼ばれた男はその場を離れた。


ただぼーっと、その2人の背が見えなくなるまで
じっとしていると、視線を感じた。


「あ、あの」


則暁くんは目が合うと、
あたしに申し訳なさそうにして口を開いた。




「貴女様はどちらの姫様で?」