真っ赤なペンで大きく示された数字に、
みんなが驚く。


この3年1組の教室にいる全ての生徒が目を丸める中、
あたし、春日由紀だけは静かだった。


「春日、お前天才!?」


「さすがね、春日さん。羨ましいな~」


「勉強法教えて~。春日さん」


みんな口をそろえて“春日さん”。


もう煩くてしょうがない。


こんなの、ただの定期テストじゃない。


ただの日本史でしょ?


名前も知らない誰かの分析の、
有名どころだけをピックアップしたクイズ。


間違えようがないじゃない。


特別な勉強なんてしてないよ。


暗記よ、暗記。


それ以外になにかある?


数学や英語じゃあるまいし・・・。



黙って席に着くと先生は言った。


「春日。もう少し嬉しそうにしてもいいだろ。
 学年唯一の全教科満点なんて―」




「先生。
 無理して嬉しそうに、なんて出来ません」



教室内がしんと静まり返る。


先生は一つ咳払いをして目をそらした。


「ま、まぁいいけど、春日。
 レポートは提出しろよ?」


気まずい雰囲気が流れる中、先生が教室を出ると、
みんなが一斉にあたしを見た。