「おい、起きろ。おい!」




「ん・・・。今起きるよ・・お兄ちゃん・・」


もう朝なの?


さっき寝たばかりなのに・・・。


あたしが目を閉じたまま返事をすると、
体が大きく揺れた。


「おい!お前大丈夫か!?起きろって。
 起きなさい!!」


「あぁもう!うるさいなぁ。起きるってばっ―」



目を開けて、体を起こして口を閉ざした。


びっくりして・・・ううん。そんなもんじゃない。


悪態をつこうと思った言葉も全て消え失せてしまう。


何?どういうこと?


「き、急に起き上がるな!ぶつけたらどうするんだ!!」


「え・・・」


「何だ、その間抜面。大丈夫か?」


は?


“大丈夫か”?


大丈夫なわけないじゃない。


だってこんなこと・・・ありえるの?



さっきからあたしの目の前で喋ってる男。


お父さんでもお兄ちゃんでも、仁でもない。


誰?この人・・・。


ていうか、どういう格好!?


「お・・・お祭り、なの?」


「祭り?そんなわけないだろう」


「そうじゃないなら、どうしてその格好なのよ」


男が着ていたのは浴衣?着物?みたいなもの。


着物姿を見たら誰だってお祭りだって思うでしょ。


それなのにこの男、さっきからバカにしたように・・。


「・・・これは普通の格好だろう」


「はぁ?いつもってあんたねぇ、何ふざけてんの!?」


「・・・ダメだ。話が合わん。
 芳!芳はいないのか!?」


男は呆れたようにため息をつくと、誰かを呼んだ。