今にも壊れてしまいそうな、砂を纏う古紙。
ひょっとするとあの男の子の姿は、
この手紙を書いた人なのかもしれない、と。
ふと、そう思った。
だって、そんな気がしたの。
もしそうならあの男の子の姿も、
この古文調の手紙も、
あの不思議な夢も全部、わかる気がする。
「もしも武士でなかったら・・・」
あなたの、
姫様のそばにいられたのに・・・。
「由紀?」
「わっ!?」
後ろから仁の声がして、思わず声をあげた。
咄嗟に枕の下に手紙を隠して振り返ると、
仁がびっくりしたように立っていた。
「お前、大丈夫?“武士”とかって、どうした?」
「な・・んでもない!大丈夫!!」
「そうか?熱も・・・ないみたいだしな」
「ちょっ、仁!?」
仁の大きな手が額に触れる。
冷たくてびっくりしたあたしを見て仁が笑った。
「なんかやっぱり今日は変だな。由紀。
よく表情が変わってる」
「なにそれ」
「ごめんごめん。ほら、また変わった。な?」
まぁ、そう言われればそうかもね。
“アイスドール”がびっくりしたり怒ったりしたら
変だよね。
って、納得する自分が情けない。
「だからさ、もっと肩の力抜いちゃえよ。
そうしたらさ、俺・・・。
もう絶対、あいつらにあんなふうに呼ばせたり
しないのに・・・・」
「仁・・・」
“アイスドール”。
あたしよりも何倍も気にしてる仁。
あたしはみんなにそう呼ばれたって、
仁がこう言ってくれるだけで嬉しいのに。
そんなふうに思いながら、
あたしはだんだん睡魔に襲われていった。