「は・・・っ!!」


白い天井がぼやけて見える。


あ。


あの小さなシミ、見覚えがある。



あれは小さい頃、家族みんなで食べたすき焼きが
失敗して出来上がったおかしな黒ずみのシミだ。




ここは、あたしの家・・・・?



「由紀!大丈夫か?・・・おじさん、起きたよ!!!」



仁がお父さんを呼ぶと、思い切り体が揺れた。


「由紀いぃぃ!!大丈夫かー!?
 どうした?ん?どうした?」


「ちょ・・っと、お父さん。苦しい」


「おじさん、倒れたばっかなんだから安静にしないと」


「だってさぁ!お前らが血相変えて“由紀が大変だ!”
 なんて言うからさぁ!!」




お父さん・・・。子供みたい。


心配かけて申し訳ないけど、これくらいで大騒ぎされると
恥ずかしいっていうか・・・。


本気で涙目になるお父さんを、
呆れた顔でお兄ちゃんが宥めた。


仁はあたしを見て微笑むと、口を開いた。


「大丈夫そうで良かった。お粥あるけど食えるか?」


「え・・・。今日はオムライスじゃ・・・」


「だーめ。倒れたんだから、今日はもう寝なきゃな」


「仁・・・」


「薬とか持ってってやるから、部屋で寝てろよ」


「うん・・・。ごめんね」


仁の顔を見れずに、あたしは俯いて謝った。