「由紀!今日こいつも家に来るっていうから、
 ご飯よろしく!」


「は?」


「由紀、俺オムライスがいいなー。オムライス」


「ちょっと、何勝手に2人で盛り上がっちゃってんの?
 仁のとこだって妹ちゃんが・・・」


「お手伝いさんのほうが好きなんだと。うちの春ちゃんは」


お手伝いさんなんていたの?


ていうか春香ちゃん、仁とあんまり仲良くないのかな。



あたしがぼーっとしていると、仁は顔を覗き込んで
手をヒラヒラさせた。


「だめ?由紀のオムライス食いたいんだけど」


そんな顔してそんなこと言わないでよ。


だめなんて言えなくなるじゃない。


「だめ・・・なんて言ってないけど・・・」


「うし!!決まり。先輩、お邪魔しまーす!」


「ちょ、ちょっと、仁!」


「ほら、由紀。おいで」







―ゆき!!-






仁の声に重なって、再びあの声が聞こえた。


立ち止まって辺りを見回しても気配がない。


仁が呼んでただけ?


でも、それでも違うような・・・。


「由紀?どうした?」


ふらつく体と痛む胸。


これは一体なんなの?






―ゆき。俺は、俺は本当は・・・―





「由紀!?しっかりしろ!由紀!!」


「じ・・・ん・・・」


「由紀!!」




薄れていく意識の中で、仁の悲しげな顔を見た。


そして、ゆっくりと目を閉じる、ほんの一瞬で。


見慣れない格好をした少年の姿を見た。









―俺は、本当は死にたくなどないんだ―