真紅の空




その言葉にはっと目を見張る。
そしてきゅっと、強く暁斉を抱きしめた。


それを合図に、暁斉はあたしを強く抱きしめ返して……
ううん、縋り付くように、しがみつくように抱きしめると、
堰を切ったように泣き出した。


嗚咽を漏らして、声を押し殺して泣いた。


男の人がこんな風に泣くのを、
あたしは見たことがない。


今まで我慢していたものだとか、
則暁くんへの想いとか、
そんなものが混ぜこぜになって溢れてきているのだと知ったら、
あたしまで大泣きしたくなった。


声を上げてわんわん泣けないのは、
きっと暁斉は次期当主という肩書に縛られているから。


だけどそんな肩書気にする余裕もなく、
泣きたくなったんだと思う。


それを全て包み込んで、受け止めてあげたいと思った。


大丈夫。
則暁くんはきっと、今でもあなたのそばにいるわ。


そばにいて、見守って、あなたの力になってくれる。


今はちょっと、しばらくお別れするだけだもの。


いつかきっと、あなたがその命を使い果たす時がきたら会えるから。
そう言って、背中を擦ってあげた。


今だけは、子どものあなたに戻って。
自分の感情に身を委ねて、全部吐き出して。


きっとあなたはここで思い切り泣いたら、
明日には元の結城暁斉に、結城博仁に戻るのでしょう。


則暁くんのことなんかなかったみたいに、
仕事をこなしていくのでしょう。


それでいいと思う。
それが暁斉らしいと思った。


そうしたらあたしも、悲しんでなんかいられない。
則暁くんのことは胸の奥にしまいこんで、暁斉に笑いかけてあげよう。


命の重みは軽薄だけれど、
人の心は温かいものだって分かったから。


人一人死ぬことがこんなにも人を乱すんだってことを知ったから、
この時代も、捨てたもんじゃないと思えた。


俺が守っているものが、お前の何かになればいいと言った
暁斉の言葉を思い出す。


そうなっているよ。


あなたが守ってきたおかげで、あたしが生きている。
そう思ってもいいよね。


だって、あなたはこんなにも必死に生きているんだもの。


現代に繋がる何かのために、今も走っている。


ああ、この時代はなんて素敵なんだろう。
誰かを、何かを守ることがこんなにも偉大なことだなんて、
現代にいたあたしは知る由もなかったのだから。