「兄さん、だったのか?」
「……ええ」
「あいつは、俺のために……?」
「……ええ」
「俺は、あいつを、失ったのか?」
「…………」
暁斉の手が彷徨い、そしてあたしの腕に触れた。
きゅっとしがみつくように掴まれるその腕の熱が帯びた。
「悔しい……」
ポツリと、暁斉が呟いた。
「俺は。なんのために戦をしているのだ。
信長様の御世のために、則暁たちのような
守るべきもののために戦うはずなのだ。
それなのに、家臣一人……
兄一人守れずして何が武士だ!」
「違う。いいのよ。守られるのは
暁斉だっただけのことよ。
お兄様が守ってくださった。
暁斉はその命を大切にして別な何かを守ればいいのよ」
もう、涙が止まらなかった。
泣かないと決めたはずなのに、
零れ落ちる涙は止まることを知らない。
すると、ぶるりと暁斉の体が一度、大きく震えた。
「……いか?」
「えっ?」
「揺らいでも……いいか?」


