「何をする」
「何をするですって?
あんたが何も分からないバカ野郎だから殴ったのよ!
則暁くんはね、あなたのためを思って死んだのよ!」
「どうして俺のために死ぬ必要がある?
身代わりなんぞ頼んでいない!死ぬなら俺で良かったんだ!」
「あんたに死なれたら困るから!
あんたはまだやることがあるでしょう?
だからあの子は死んだのよ!
自分が命を賭してでもお守りするんだって、
そう言っていたわ!
決して無駄死になんかじゃないわ!」
「俺なんか捨て置けばよかったのだ!
どうせあいつだって他の奴らと同じで、
俺に文句の一つでも言いたかっただろうよ!
嫌々俺に仕えていたかもしれないだろう!」
「バカ!」
もう一度、殴りたかった。
だけど今度はそんな力はなくて、
ぺチンと頬に当たっただけだった。
「則暁くんの本当の名は、春仁。
あの子の名前は結城春仁。
あんたの、双子のお兄様なのよ……」
はっと息をのむ音がした。
暁斉の瞳が揺れる。
眉を顰めて、口をぱくぱくと開閉させていた。
「はる、ひと……双子の、兄……?」
「あの子は、あんたが……好きだったのよ。
弟が嫌いな兄がどこの世界にいるっていうのよ!」
「そ、んな……なんで……」
ずるりと、暁斉の体の力が抜けて崩れ落ちる。
もう一度支えるようにして一緒に崩れ落ちた。
項垂れて、苦しそうに息をする暁斉を見て、
強く目を閉じた。
この現実が全て夢だったらいいのに。
ううん、この二人は、きっとこの時代に
生まれないほうが良かったのよ。
あたしの時代に生まれていたら、
きっと仲の良い兄弟になって幸せに暮らせたかもしれないのに。
死ぬとか生きるとか、そんなこと考えなくても、
未来を見て歩いて行けたはずなのに。


