暗くなった夜道を仁と2人で歩く。


仁はいつでも明るくてよく笑う。


仁が笑うとほんとに無邪気で、
こっちまで笑いたくなるくらい暖かい。


つまり、安心するの。




「でさ、俺が利き足じゃない左でゴール決めたら、
 陣内が隣のクラスの加藤さんに告白するって
 いうからさ、気合入れて試合したんだよなぁ」


「そうなんだ。で、入ったの?失敗?」


あたしが聞くと、仁は口角をあげてあたしを見た。


「どっちだと思う?由紀は」


「え・・・っと」


急に聞かれて困ったあたしの目を、仁は見つめた。




仁は器用だ。


この間の跳び箱10段以上の挑戦の時だって、
“左手だけで跳ぶ”っていうみんなの無茶振りも


屋上から体育館の屋根に飛び移ってバランスを崩さず、
かっこよくダンスが踊れたら1000円っていう
馬鹿な賭けも、


仁は見事やってのけた。



きっとサッカーだってできるんでしょ?
左でゴール。


だけどあたしは仁から目をそらして言った。


「陣内くん、告白できなかったでしょ」


「ん。あたり」


「え!?外したの!?」


返答が予想と違っていたことにびっくりして叫ぶと、
仁はまた大きく笑った。


「由紀のびっくりした顔、久しぶりに見た。
 陣内、顔真っ赤にして話しかけらんなくてさぁ」


「じゃ、じゃあ・・・」


「ん?俺は入れたよ。こう、綺麗にズバッと、な!」


呆然とするあたしを横目に、
仁は再演するように小石を左で蹴った。




「いってぇー!!」



「は?」


「え・・・・」