馬を駆って屋敷まで戻ると、
芳さんがあたしたちを待っていた。
芳さんは則暁くんのことを知っているらしくて、
馬を降りると二人で見つめ合い、
それから何も言わずに抱き合った。
すると他の家臣たちもぞろぞろと顔を出して、
一人ひとり順番に抱擁を交わしていく。
みんな、言葉はなかった。
ただ抱き合うことで気持ちを通じているんだと悟る。
あたしもそうしたかったけれど、泣き出してしまいそうだったからやめた。
則暁くんの背中をただじっと見つめる。
拳を握りしめて堪えていると、
芳さんに肩を叩かれた。
「仕方のないことなのさ。この時代ではな、
こういうことが起こりうる。
則暁は、運がなかったのさ」
「そんな言い方、あんまりよ」
「そうでも言ってらんねぇと、やるせないのさ」
一瞬むっとしたけれど、
その言葉で芳さんも悲しいと言っているのが分かる。
だから怒るのはやめにした。
他の家臣も、涙こそみせないけれど、みんな悲しんでいる。
それもそうよね。
苦楽をともにした仲間がいなくなるんだもの。
ただ、みんな暁斉に悟られないように必死に気持ちを隠している。
みんな大人だなと思った。
あたしはそれが出来るかしら。
明日の朝になって、やっぱり死んじゃ嫌だと泣き喚いたらどうしよう。
そんなことにならないように、
今ここで気持ちの整理をつけておかなきゃと思った。
この日、あたしは眠れずにいた。
じっと天井を睨みつけて、思いを馳せていた。
あたしが眠りについたのは、日が昇り始めた頃だった。


