そう言った時、涙がとめどなく流れた。
私の好きになった人は、こんなにも誰かから愛されている。
それがどれほど幸せなことなのか、あなたは気付いているの?
穏やかな則暁くんの笑みが滲んでいく。
こうして息をしているのに、
則暁くんは明日にはいなくなってしまう。
出来ることなら繋ぎとめておきたいと思うけれど、
そうしてはいけないと思うのは何故だろうか。
この人の、固い決意を無駄にしてはいけない。
暁斉はまだ、生き延びなければならない人間だ。
そのために、自分の弟のために命を賭して守り抜く。
お兄様の苛烈な覚悟。
なんて美しいんだろうか。
「ねぇ、則暁くん。雪姫様に、会いにいきましょう」
「えっ?」
「あいつのために死ぬこと、雪姫様に知ってもらおう?
ね?私も一緒に行くから」
「由紀殿、私は……」
「春仁くん。行きましょう」
本当の名を呼べば抗えなくなること、
この間のことで知ったから。あえて名を呼ぶ。
則暁くんは観念したようにため息をついて、
それからゆっくりと頷いた。
「貴女って人は、本当に」
そう言って、則暁くんは笑った。
暁斉に見つからないように屋敷を出た。
馬を駆って雪姫のもとへと急ぐ。
こうして抱きしめられる形で馬に乗っていると、
その熱を感じる。
ああ、この人は生きている。
とても明日死ぬとは思えないくらい。
そう思うと悲しくなって涙が出た。
だけど、もう泣いてはいけないような気がする。
暁斉に悟られてはならない。そう思うから。


