一瞬わけが分からなくて首を傾げる。
何言ってるの?消えるって、どういうこと?
「私は、明夜、死にます」
「な、なん……えっ?」
ぐらりと世界が揺れた。
聞きなれない言葉で頭の中がぐちゃぐちゃになる。
たとえば自殺をしたいと願う人は、
死ぬ前の日、こんな顔をしているのだろうか。
生きることに、何も未練はないのだろうか。
則暁くんの表情は晴れていた。
だから、あたしのほうが戸惑っていた。
明日の夜、死ぬだなんて……そんな急な……。
「どう、して?」
「敵方が此度の戦で活躍した暁斉様のことを耳にしました。
敵方にとっては暁斉様の存在はとても恐ろしいもの。
その力を排除したいと思うのは当然のことでしょう。
人質となっている信長様の側室の玉姫様を解放する代わりに、
暁斉様の首を差し出せと交渉を図ってきたのです」
「あいつの、首を……
それでどうして、貴方が死ぬことになるのよ」
「分かりませぬか?私は、暁斉様と血を分けた双子。
顔だって似ています。力も見た目も変わらない。
敵方を騙すのは造作もないこと。
信長様は暁斉様を失うことをとても怖がっておいでです。
そこで、私が替え玉となってこの首を差し出すように、
信長様に命じられました」
「なっ……!」
「私は、暁斉様の身代わりとなって死にます」