えっ?と思って目を見張る。
まさか則暁くんからそう言われるとは。


素直にはい、そうですと答えられないでいるのは、
きっと仁とのことがあるから。


何も言えないあたしは喉を鳴らして
唇を真一文字に引き結んだ。


「好いておられるのですね。良いことです。
 そのまま、貴女様はそのままのお気持ちでいてくだされば、
 きっとあのお方も諦めるでしょう」


「あのお方って、雪姫様?」


「ええ。雪姫様が諦めれば、
 暁斉様も心が穏やかになるでしょう」


あたしがあいつのことを好きでも、
あの人は諦めないと思うけれど、黙っておくことにした。


それよりも、あたしが気になるのは―


「ねぇ、そんなに雪姫様が心配なら、
 則暁くんがなんとかすればいいじゃない」


ピクリと眉を動かして、則暁くんは首を傾げた。
本当に何を言っているのか分からないという顔だ。


「なんとか、とは……」


「則暁くんの想いをぶつけて、雪姫様を幸せにするのよ。
 そうしたら、きっとあなたを好きになってくれるわ。
 そうしたらあなたも雪姫様も幸せに暮らせると思う」


「それは……なりません」


悲しそうに、則暁くんが言う。
どいうことかと、今度はあたしが首を傾げた。



「言いましたよね。
 身分違いの恋など、してはいけないのです」