古文の授業でよく見るような字面。
まるでミミズが這うように繋がった文字。
理解したくはなくても、頭ではわかってしまう。
「いつの時代の・・・・」
自分で紡いだ言葉に混乱する。
“いつの時代”?
何言ってんの?あたし・・・。
目を逸らしたくても逸らせない。
わかろうとしなくても頭に入ってきてしまう。
この、手紙の送り主の想いが・・・。
「“私が・・・武士でなかったなら―”」
私がもしも、武士でなかったなら
あなたのそばにいれただろう。
この世に戦がなかったならば
あなたの涙もなかっただろうに。
「この人・・・もしかして・・・」
―ゆき―
また、声がした。
頭が割られるような感覚があたしを襲う。
これは空耳なんかじゃない。
誰かがあたしを呼んでいる。
―ゆき・・・っ―
「やめて・・・っ!!」
ばさばさっと派手な音を立てて、
手の中から本が滑り落ちた。
静かなこの空間には、
あたしの叫び声だけが響く。
息を整えて、あたしはゆっくりと立ち上がった。
カウンター席へ歩くと、
手をのばしてペンと紙をとる。
別に本を借りるために貸し出しカードに記入
するわけじゃない。
ただ、あたしは・・・。
「由紀!」