同時に、あたしの手を、優しいぬくもりが包み込んだ。 あたしは、このぬくもりを知っている。 忘れるわけが、ない。 瞼をこじ開ける。 視界に飛び込んできたのは春の空。 そして、 窓枠に腰かけた、黒髪の人。 ダークブルーの瞳が、少しだけ、大人びた色をして、あたしを捕らえた。 「…ただいま」 彼の声は、相変わらず、綺麗。 あたしは思わず、微笑みを零した。 また、この季節に、廻り会えたね。 「…おかえり、カイト」 ――おかえり。 あたしの いとおしい人。 【End】