そんで、カイトに引っ張り起こされて。
初めて、抱き締めてくれた。
「…あたし、あの時から、もしかしたら、カイトのこと、好きだったのかもしれないよ…」
「…そっか」
「うん。…抱き締められたの、すごく久しぶりだったんだ。ホラ、あたし、家族でいろいろあったし…。
……ホントは、あの瞬間、あたしカイトとゲームオーバーになるつもりだった。
だって、こんなあたし…まさか、見捨てないでくれるなんて、思ってなかったんだもん。
…だから、すごく、嬉しかったんだ」
あの頃。
お母さんは仕事ばかりで、葵のこともあって、離婚もしたばかりで、苗字も変わったばかりで。
もう、周りの変化についていけなくて、ズタズタだったあたしを。
現実から逃げていたあたしを、泣くに泣けなかったあたしを。
抱き締めてくれたのはカイトだった。
誰かのぬくもりを、久しぶりに感じた瞬間。
あたしは、その時すでに、君に恋をして居たのかもしれないね。
あたしたちは、すぐには家に帰りたくなくて、その公園のベンチに座って、今まであったことを、笑いを交えながら話していた。
ここにずっと居るつもりではなかったけれど、でも、この時間がとても大切だった。


