カイトの言葉は聞こえなかったことにして、あたしは机の中を覗き込む。
置きっ放しの教科書やノートの中から、目的のノートを見つけて、引っ張りだす。
パラパラとノートを捲り、あたしの汚い字を飛び越して、後ろの方にあった、あの日の会話の部分を開く。
「…あった!うわ、懐かしい~ww」
「こんな会話したな」
「“千早って面白い”って…カイトはやっぱりカイトだね…(遠い目)」
「千早も千早だな」
「変わってないのに、変わっちゃったね…いろいろと」
「…あぁ」
数行の会話を眺め、呟く。
こんな風に、カイトとの会話を、全部、録音しておけばよかった。
全部全部。
カイトの声を忘れないように。
あの日の気持ちを忘れないように。
一瞬、一瞬。
全部、全部。
…忘れたく、ないよ。
「……完全記憶能力があればいいのになぁ…あたしに…」
本当の気持ち。
忘れたくない、何もかも。
カイトのことを、居なかったようになんて、そんなの無理だ。


