「…千早を傷つけたっつーのが…許せなかったっつーか…
…そんなの、俺も一緒なんだけど…
…俺が言えるような立場でもねェのに」
カイトの声は静かで、寂しげだ。
きっと、夏の出来事を思い返しているに違いない。
あたしはカイトの背中に額を押しつけ、首を振った。
「…そんなことないから。
カイトだって、何も悪くないんだから。
……嬉しかった…から。
ああ言ってくれて、嬉しかった。
ありがとう、カイト」
素直な気持ちを言葉にすると。
カイトはあたしの手をゆっくりと自分から離し、こちらを向いて、あたしを強く抱き締めた。
「……あと、ムカついた。
千早がアイツのこと好きだったとか…抱き締めてるとことか見たら、ムカついた。
悪い。俺、独占欲強いっぽい」
耳元で聞こえるカイトの素直な言葉。
それに、あたしは妙に嬉しくなって、胸の奥がギュッと狭くなった。
くすぐったくて、思わず笑みが零れてしまう。
「…何、笑ってんの」
カイトがあたしから少し離れ、至近距離で見つめてくる。
その拗ねたような表情を見たら、なんだか可愛くてまたにやけてしまった。
「ううん、なんでもない!」
カイトのことを、改めて好きだなと思った。
大好きだなって思った。
――でも、あたしは、とても重要なことを忘れていたことに、この時、まったく気がつかなかった。


