「…で。どうして私が榊さんの靴を取りに行かなきゃいけないの!?」

「姫は何もしてないからに決まってるでしょ」

「私が何もしてないですって!?よく思い出して御覧なさい!私が活躍してない場面が一つでも御有りになって!?」

「そうね、数百ページは余裕であるわね。」

「そこは私登場してないから!!」

「はーい。つべこべ言わずに行きなさーい。お姉様からの命令でーす」

「私に命令しないで欲しいの!!“小さい町”のクセに!!」

「……ひーめー。お姉ちゃんそろそろキレそうなんだけどいいかなー?」

「行ってきますッッ!!!!」



………………。


再びの戦いは、やっぱり姫華の敗北で幕を閉じた。

あたしは腰に手を当てて姫華の後ろ姿を見送る小町さんに声をかける。


「…す…すみません…なんか……お姫様に…靴を取りに行ってもらってしまって…」


すると小町さん、大爆笑。


「お姫様!お姫様とか…!!(大爆笑/酸欠)

…ゲホゴホッ……

…いいのいいの!あの子はちょっといやかなり甘えただからね!あのくらいしてやんないと成長しないって!」


小町さんは恐ろしくも、妹思いの優しいお姉ちゃんらしい。










息を切らして戻って来た姫華の手には、きちんとスニーカーが握られていた。

それを乱暴にあたしに突き出しながら、姫華は言う。


「取ってきてあげたの!!感謝してよ!!

…それと、お母さんが心配してたの!!戻るならさっさと戻った方がいいの!!」


言って、姫華はそっぽを向く。

“ありがとう”と言おうとしたら、姫華がすぐに口を開き。