こうなる前までのことを話すと、花梨は驚いたように目を丸くした。
「…うそ……一緒に…住む…?」
信じられないんだろう、花梨はあたしが言ったセリフを復唱した。
あたしが頷くと、花梨は俯いて口を閉ざしてしまった。
しばらく沈黙が続き、不意に。
「…あのこと。葵のこと。お母さんに話した方がいいと思う。あたし」
花梨はグッと顔を持ち上げ、あたしを強い瞳で捉えて言った。
あたしはその言葉に驚き、首を振る。
「む…無理だよ……」
「でも嫌なんでしょ?」
「……うん…」
「じゃあ、どうにかしないといけないでしょ?このまま、こうやって逃げて、生きていけると思ってるの?」
「…………。」
何も言えない。
ホントのところ、あたしもそう思っていた。
このまま生きていけるなんて思ってないし、その前に、生きていけるわけがない。
いつまでも逃げてばかりじゃいけない。
でも、
どうしていいかわからない……。
ずっと黙りこんだままのあたしに、花梨はため息をつき、ゆっくりと立ち上がる。
「…なんて、あたしが言える立場じゃないけど、一応、ね。
この後どうするかは、千早次第だし。
…まあ、よく考えなさいよ。
あたし等も、何もできないかもだけど、とりあえず居るんだし」
軽い感じで言って、「帰るわよ」と瑞希に言い放ち背を向ける花梨。
瑞希はリビングを出て行った花梨の背中を見届け、立ち上がりながらあたしを見る。


