日が傾いて、夕方が近づいて来た頃。
あたしが街の中を一人ブラブラして、ようやく家路に着いた頃。
ふと、目に止まったお店に帰ろうとしていた足が緩んだ。
あたしは一番重要なことを、まだ解決していない。
違う。
怖くて、できれば逃げたくて、見ないようにしていた事実。
見たくない…
今すぐ逃げたい…
…だが断る!!
あたしは「ふんっ」と鼻息荒く気合いを入れ直し、そのお店、【Andante】に向かって足を進めた。
あたし怒った。
もう怒った。
ガチで怒った。
カイトの野郎何してんだコラァアアッッ!!!!
バイト先に行けば絶対何かがわかる!
あたしの第五感が…いや違った…第六感がそう言ってるんだ!!
扉の取っ手に手を置いて、それを握り締め、ぐっと、勢いよく引っ張った。
ガランッ
あの日と同じ、大きな鐘の音が鳴り響く。
夕方だからか、お客さんは疎らだ。
「いらっしゃいませー……っあ!千早ちゃんっ」
お店の奥から出てきたのは、小町さん。
何故か名前を覚えられている。
何故だ。


