「ちょっとそこの眼鏡野郎!!止まりなさい!!」
…――久しぶりに聞いた、この声。
反射的に、声の方へと顔を向ける。
走って来たのか、息の上がった状態で、花梨がそこに立っていた。
行こうか行かないか、決めるまでに相当悩んで、咄嗟に走って来たんだろうと思う。
いつも結んでいる髪の毛は、下ろしたままの恰好だった。
来てくれたんだ、と思った。
実を言うと、あたしが拒否られる覚悟でメールを送っていたのだ。
“明日、双子帰るよ”と。
来てくれないかと思ってたけど……。
花梨は、やっぱり花梨だった。
驚いたように立ち止まる伊吹は、花梨へと顔を向けて、当然の如く。
「…どうしたんですか?」
唖然としたような声色で尋ねた。
花梨は胸に手を当てて息を整えつつ、伊吹に歩み寄る。
それから、伊吹を見上げ、目を逸らし。
決意を固めるように瞼をギュッと閉じてから、思い切り顔を上げて目を見つめた。
「あたしっあんたのこと好きだからッッ!!」
顔を真っ赤に染めて、だけど強気モードはそのままに。
花梨らしい告白だった。


