ホント…容赦ないなぁ……(涙)。
あたしは唇を尖らせ、ペットボトルの水を飲む。
それから立ち上がり、歩き出す。
「もういいんですか?」
「うむ!この街に居ないってことは、あたしたちの住んでる街ってことだよね!!」
「正確には、千早さんだけですけど」
「細かいことは気にしたら負けなのだよ伊吹くん!!さあ行くぞ!!我が故郷へ!!」
叫びながら右手をピンと伸ばし、ゴーサインを出す。
伊吹も渋々立ち上がり、駅へと一緒に向かった。
街に戻ってきても、やっぱり行くあてもない。
茉莉がどこに行くかなんて、そう言えば知らないんだった。
あたしはトボトボと夕暮れの街を歩きながら、肩を落としてため息をつく。
「…伊吹くん……」
「なんですか?」
「茉莉がどこに居るか…電波飛ばしてくれたまえ…」
「頭大丈夫ですか?」
「…いたって正常さ…ふふっ…」
「あなたの頭が正常なんて言ったら他の人に失礼なんで訂正してください。」
「…それはあたしに失礼だよ…」
ゆーらゆーらと両手を垂らしつつ、あたしは力なく笑う。
嗚呼…もう何もかも上手くいかない…。
そう思って、二度目のため息をついた、
その時。
「…あ」
伊吹のそんな声、そして立ち止まった眼鏡くんに、あたしは遅れて立ち止まる。
振り向き、尋ねる。
「どったの?」
伊吹は何も言わなくて、ただ前方を見つめているだけ。
だからあたしもその視線を追って――…
…――見なきゃよかったと後悔した。


