失恋歌

そして昼休みになり
俺は楓夏の所へ向かった


「楓夏〜!昼飯食おうぜ〜!」

「…朝倉くん、ふうなら相川くんと屋上に行ったよ?」

「マジかよ…さんきゅ!井上」

「うん!」


俺は屋上へと走った
2人だけで抜けがけとか許さねぇかんな

「…はぁ…はぁ…疲れた…」

屋上のドアの前で俺は力尽きていた
すると誰かの話し声が聞こえてきた

こっそりのぞいてみると
そこにいたのは…

「…楓夏と竜?」

2人が楽しそうに話していた
朝みたいに…

俺の入る隙間ははい…

「…はぁ…仕方ねぇ…帰るか」

俺は2人っきりにしてやろうと思い
来た道を戻ろうとした

でも、俺は戻らなかった
いや…戻れなかった

2人の会話の中に
俺の名前が出てきたから…

俺は気になって
その場に残って2人の会話を聞いていた

「何だよ…俺に隠れて俺の悪口か?」

そう思ったが、違った
どうやら俺の名前を出したのは竜らしい

竜から楓夏に質問をしている


「ふうはさ、雄の事どう思ってんの?」

「…え?どうしてそんな事聞くの?」

竜は今、俺が一番引っかかっていた事を
楓夏に聞いた

楓夏は少し動揺しているようだ

「…どう思ってるのか…教えてくれないか?」

「…雄の事は…好きだよ?」

……楓夏の口から出た言葉
それは好きという言葉だった

「それは幼なじみとして?それとも恋愛感情?」

「……………幼なじみとして…かな」

「…そうか。恋愛感情はないのか?結構長い付き合いなんだろ?」

「うん。雄の事は好きだけど…恋愛感情をもった事は…一度もないの…」


…………そうだよな…分かってたよ
分かってた…はずなのに…

何でこんなに胸が苦しいんだろ…


「…じゃあ、もし雄に告白されたらどうする?」

やめろ…もういいだろ…
そんな事聞くなよ…

「…それは…ないと思ってるから…」

「……え?」

「雄が私に告白してくるなんて…ないと思ってるから…仮に告白されたとしても…雄を傷つけるだけだから…」

それを聞いた瞬間
俺の中の何かが崩れた音がした

気づいたら俺の目から涙が溢れていて
何とも言えない感情が…俺の頭を…心を支配した


「…そうか…ごめんな?こんな事聞いて」

「ううん、大丈夫だよ。それにしても雄…遅いね」

「あいつ…何やってんだろうな」


…俺はここにいるよ、楓夏
ごめん、全部聞いちまった…

何であの時…素直に教室に戻らなかったんだろ
バカだな…俺…


「…何やってんだよ…俺は…っ!」

心のどこかで少しでも期待してた
俺が馬鹿だった…

分かってたのに…こうなる事は…
分かってて告白しようと思ってたのに…

何でだよ…何で…


「…ごめんな…楓夏…」

俺は屋上のドアから2人を一瞬だけ見て
その場を去った…