失恋歌

「…なぁ、雄。いい加減顔上げろよ」

3時間もぶっ通しで顔を伏せていた俺に
しびれを切らせた愛斗が俺の肩を叩いた

そして俺は、3時間ぶりに
顔を上げた


「……おはよ、愛斗くん」

「寝すぎだ、バーカ」

愛斗は安心したように笑った
それにつられて俺も笑った


「…雄…少し話がある。屋上に行こう」

「………分かった」

そして俺たちは4時間目をサボり
屋上へと向かった


「……んで?話って何だよ」

「単刀直入に言う。お前何かあったろ?」

愛斗の目は心配そうに揺れていた
やはり愛斗に俺の嘘は通じないみたいだ

「…ちょっと、竜とな」

「相川?喧嘩でもしたのか?」

「いや、違う。俺が耐えられなくなったんだ。あいつと2人でいるのが」

「…何か言われたのか?」

「…俺が何考えてんのか分かんねぇんだと」

「え?」

俺は朝のことを愛斗に全て話した
俺が楓夏の事が好きだということを除いて


「…俺…そんなに何考えてるか分かんねぇかな?」

「そんな事ねぇよ。俺には分かるぞ?お前が何考えてるかくらい」

「…ははっ…愛斗はすげぇよ」

「何がだよ。相川がお前の事よく見てないから、雄が何考えてるか分かってないんだよ」

愛斗は少し苛立ったような口ぶりで
そう言った

「…なぁ、愛斗」

「ん?どした?」

「俺は…楓夏のために何が出来るかな」

「……雄がふうちゃんにしてあげたい事をしてあげればいいんじゃないのか?」

俺が楓夏にしてあげたい事か…
俺に何が出来る?楓夏に何をしてやれる?

「…俺が楓夏にしてやれる事なんて…ねぇよ…」

「え?何言ってんだよ、雄」

俺はまた泣きそうになった
それを必死にこらえた

でも、一度あふれそうになった涙は
こらえる事が出来なくて

俺は初めて…愛斗の前で泣いた…