失恋歌

「…雄、聞いてる?」

「…………え?あ、ごめん!聞いてなかった…」

「何か難しい顔してたよ?」

「え?そうか?」

そんなに難しい顔してたかな…
ちょっと、考え事してただけなんだけど…


「…ねぇ、雄?」

「ん?どうした?」

楓夏は真剣な表情に変わり
俺に語りかけてきた

「…私ね、雄にお礼言いたいの」

「お礼?何の?」

俺はお礼を言われるような事
何もしてないけど…

「…昔、私のために強くなるって言ってくれたでしょ?」

「……あぁ、そんな事もあったな」

「私の事守るって言われた時…すごく嬉しかった…」

「……俺、ちゃんと守れてるか?」

俺はまだ弱いままだ
結局何も変わっていない

ただの弱虫…

「もう十分…守ってもらったよ…本当にありがとう」

「……そんなお礼言われるような事…俺は何も出来てない…」

「ううん。私はもう十分だよ…雄がいたから私は今、こうしてここにいられるんだから」

楓夏は俺の顔を見てそう言った
俺はその言葉が何より嬉しくて…

こんな俺でも楓夏のために
何かしてやれていたなら…俺はそれだけで…

「…楓夏…ありがとな」

「お礼を言うのは私の方だよ」

「…俺…少しでも変われたかな?強くなれたかな?」

「うん。雄は強いよ…誰よりも」

「…ありがとう…!」


俺は泣きそうになった
今にも溢れ出しそうな涙をこらえ

楓夏に笑顔を向けた

その俺の笑顔に応えるように
楓夏も俺に笑顔を向けた