失恋歌

竜side


雄はすげぇ早かった
俺は負けると思った

でも、雄は俺の目の前で
しかもゴール目前で

倒れたんだ


「雄っ!」

俺は雄の元に駆け寄った
雄の顔は真っ青で

呼吸も荒かった
膝や肘からは血が出ていて

恐らく倒れ込んだ時に
擦ったのだろう

俺は雄の肩に手を回し
保健室へと連れて行った

「相川、俺も手伝うよ」

「…あぁ、助かるよ」

雄といつも一緒にいる
高梨と共に保健室へ向かった


「失礼します」

保健室に入ると
ふうが起きていた

そしてこちらに気づくと
目を見開いた

「…雄!どうしたの…?」

「多分、こいつも熱中症。しかも少し症状が重い」

「…顔色悪い…大丈夫かな…」

ふうはすごく心配そうに見ていた

「先生、もう一人倒れました」

「…朝倉くん?!しかも呼吸が荒いわね…奥のベッドに運んでくれる?」

俺たちは先生の指示通り
奥のベッドへ雄を運び、寝かせた

そして先生は、濡れタオルを雄の目にあて
保冷剤をわきの下などに挟んだ

「…これで多分大丈夫だと思うわ。運んでくれてありがとね」

「いえ、全然大丈夫です」

「高梨くんも、ありがとね」

「…大丈夫ですよ、俺も」

高梨は心配そうに
雄を見ていた

「先生、雄早退させるんですか?」

「…そうね…目が覚めてみてから考えるわ」

確かに、早退させた方がいいかもしれない
まだ呼吸は乱れてるし、顔色も悪い

「ふうちゃんは、もう大丈夫?」

「…うん。だいぶ落ち着いたみたい」

ふうの顔色は戻っていて
元気そうだった

「…じゃあ、俺は戻りますね。相川はここにいろよ。先生には伝えとくからさ」

「あぁ、分かった。ありがとな」

高梨は力なく笑うと
また校庭へと戻っていった


「ちょっと先生も、職員室に行ってくるわね。雄くんの事見ててあげてね?」

「分かりました」

先生もいなくなり
保健室には、俺とふうと雄だけ

「…ふうもこっちにおいで?」

「…うん…」

ふうはまだ少しふらつきながら
俺の方へとやって来た

しばらく沈黙が続いたが
その沈黙を破ったのは俺だった