とりあえずは勝った。
今はそれだけで…
それだけでいいだろう…
パンサーは特攻服を着ない。
なぜか皆普段着ている学校の制服を着ている。
一つは中央正鈴高校の。もう一つは
暗い灰色のズボンに、鮮やかな真紅のネクタイが印象的な制服だった。
共通点はそれだけで、各々個性のあるカーディガンやパーカーを着ていた。
きっと、あれが南にあるという南紅高校の制服なのだろう
そしてもう一つは一般的な学ラン。
風に靡くパンサーの背中をみながら総長は
「…あぁ」
と、安堵の表情を浮かべながら同意した。
「お前らのおかげで北も暫くは、おいそれとは動けないだろうしな」
敵に背中を向けてまで逃げる北を「カード、金」という表向きの理由で執拗にまで追い掛け回した。
気づく者しか気づかないが、
どうやら彼らはああ見えて策略家のようだ。
それに英人も健太もついていた。
彼らも頭を抱えていたとはいえ、真剣に止めようとしてはいなかったところをみると、
きっとやり方の問題だったのだろう。
だが、それはそれなりの実力を持っていないと出来ないこと。
(なんて危険なことするんだか…)
危険を顧みない行動をしてでも自分達パンサーが連合にいることを見せ付けて、
易々とこちらに仕掛けてくることが出来ないようある程度の戦意を削った辺り彼らの底が窺い知れない。
「大悟ー!帰るぞー!」
健太が大悟に向かって声をかける。
それに気づき振り返った大悟は周りに声をかけると、
やはり飄々とした空気を隠しもせずこちらに歩いてきた。
「ほな帰ろかぁ~」
ゆるゆると英人と健太に声をかけ、総長の前に立つと
「申し訳ないんやけど、帰らしてもらうわ~
なんせ、追われてるさかいな」
あはは、と笑っていう大悟に「大丈夫だ、気をつけて帰るんだぞ?」と穏やかに言う。
それに「はぁ~い」と言ってバイクへと向かった。
その後に英人、健太、朔夜に真守、パンサーの面子が続く。
「お前ら、本当に南が好きなんだな」
少し不思議そうにも聞こえる声音でいった総長に、大悟が言葉を返す。
「当たり前や~。それに、
ちゃんと約束もしたやろ?」
おどけていう大悟。
総長はそれに苦笑いを返し、
「そうだったな」
と小さく返した。
